能ある彼女は敏腕社長に捕獲される

「父が家庭を省みなかったことが原因で母と姉が家出をした…と言う話は、聞きましたよね？」

「はい、聞きました」

私が質問に答えたら、
「母と姉が家出をして幼いながらに寂しさを抱えていた私を救ってくれたのが家政婦の二田さんとその息子の大介さんでした」
と、彼女は話を始めた。

「大介さんは私とは２歳下でしたが、彼は私の遊び相手になってくれました。

私は大介さんを弟のようにかわいがって大切にしていたのですが…弟のように思っていたその感情が１人の男へと変わったのは、そんなにも時間がかからなかったと思います。

大介さんが大学に進学したのを機に、私たちは二田さん公認の元で交際を始めました。

彼は『トウゴウ』の経理部に就職をして３年目を迎えた今年に、父に交際のことを話して結婚のあいさつに行く予定でした」

彼女は喉を潤すためにお冷を口に含んだ。