「ちょっとそこで立ち止まってくれるか?」

社長に言われて、私はその場で立ち止まった。

何だろうか?

社長は私の前で跪くと、右足のパンプスを脱がせた。

「えっ?」

驚いている私に気づいていないと言うように、社長は胸ポケットから手帳型のスマートフォンを取り出した。

そこから絆創膏を取り出すと、私のかかとにペタリと貼った。

「応急処置で悪いが、気づかなかった俺も俺だからな」

社長はそう呟いたかと思ったら、立ちあがった。

「…私が靴擦れをしていたことがよくわかりました」

私がそう言えば、
「『片桐総合病院』を出たところで君が足を引きずるようにして歩いていたからな」
と、社長は言い返した。

どうやら気づいていたみたいだ。