車が発車すると、
「あれ、家は反対側の方だったかと思うんですけど…?」

何故か家とは逆の方向へと車を動かした社長に私は声をかけた。

「君と早く話がしたいと言っただろ」

話がしたいなら家に帰ればいいだろうと言う話である。

社長の言っていることがわからないし、そのうえ行動も逆過ぎるだろうと思った。

我ながら失礼だと思うが、社長はボケているのかツッコミ待ちなのかと疑ってしまった。

窓の外へと視線を向けたら、
「それで、どこへ行ってきたんだ?」
と、社長が聞いてきた。

「父親の墓参りです」

私がそう答えたら、
「何か悪いことを聞いたな」
と、社長はそんなことを言った。

「気にしないでください、父親が亡くなったことを知ったのはつい最近だったので」

私は言い返した。