「それで…私、迎えなんか頼んでいましたっけ?」

兄の後ろ姿が見えなくなって質問をした私に、
「頼んでない」
と、社長は答えた。

「ですよね」

そう言い返した私に、
「俺が勝手にやった」
と、社長は言い返した。

「…何でですか?」

怒っていると言う訳ではないけれど、聞きたかったので言った。

「君と早く話がしたかったから」

「家に帰ってからすればいいんじゃないですか?」

そう言った私に社長は呆れたと言った様子で息を吐いた。

呆れた理由もわからないうえに息を吐いた理由も見当たらない。

「とりあえず、乗れ」

そう言った社長の後ろに車があることに私は気づいた。

わざわざ車に乗って私を迎えにきたのかと、そんなことを思ってしまった。