最寄り駅に到着して電車を待っていたら、
「何かさ…」

兄が声をかけてきた。

「何?」

私が返事をしたら、
「父親の本当の姿を初めて目にしたような気がする」
と、兄は言った。

「俺たちが父親に興味も関心もなかったからって言う話だけど…さっきのあの人の話を通してだけど、少しだけわかることができた気がする」

「うん…時間はかかったけれど、少しだけ向きあえたかも知れないね」

過去にケジメをつけることができたかどうかと聞かれたらよくわからないけれど、私と兄の中では少しだけ向きあうことができたような気がする。

「間もなく、2番線ホームに電車が到着します」

ホームにアナウンスが流れたのと同時に、電車の音が聞こえた。