「何だ?」

社長は本を閉じると、私と向きあった。

「先ほど『トウゴウ』のお嬢さんから連絡がありました」

まずは『トウゴウ』のお嬢さんのことを報告した。

「それはよかったな」

そう言った社長に、
「婚約の話もなしになったと言うことです」
と、私は言った。

「本当に助かった」

社長はふうっ…と息を吐くと、
「君のおかげだな」
と、言った。

「いえ…」

『トウゴウ』のお嬢さんにも同じことを言われたな…。

心の中でそんなことを呟くと、私は社長と視線をあわせた。

「私の方から聞きたいことがあるんですけど、よろしいでしょうか?」

そう話を切り出した私に社長は驚いたようだったが、
「何だ?」
と、話を聞いてくれるみたいだった。