「ああ、そうしてくれ」

私の返事に、社長は言った。

「私は兄を途中まで送りますので、社長は先に駐車場の方へと向かってください」

「わかった」

社長が返事をして、私たちの前から離れた。

その後ろ姿が見えなくなったのを確認すると、
「兄ちゃん、ありがとう」
と、兄に向かって私は礼を言った。

「礼には及ばん」

兄は両腕をあげて伸びをすると、
「それにしても、お前ンところの社長はなかなかの色男だな」
と、言った。

「そう?」

「そうだよ」

性格に問題がある点を除けば、兄もなかなかの色男だと私は思う。

「兄ちゃん」

「んっ?」

「ーー私たちも向きあってみる?」

そう言った私に、
「…過去に、か?」
と、兄は聞いてきた。