能ある彼女は敏腕社長に捕獲される

「ーー私は…」

『トウゴウ』の社長は呟いているような声で話を切り出すと、
「私は…ただ、家族を幸せにしたかったんだ…」
と、言った。

そう言っている意味がわからなくて、私は首を傾げた。

「子供の頃に両親を亡くして、父方の親戚に預けられたけれど…すでに家族がいたそこに、私の居場所はなかった。

中学を卒業するのと同時に親戚の家を出て、働きながら独学で経済を勉強して、20代の頃に会社を起業して自分の家庭を持った。

居場所がなくて寂しい思いをした分、やっと持つことができた自分の家族を幸せにしたかった」

昔の話をする『トウゴウ』の社長に、自分の胸が締めつけられたのがわかった。

「だけど…それは、私のエゴだった。

自分が子供の頃にできなかったことを家族に押しつけて…」

その声は、ひどく震えていた。