「へぇーそっかあ、成る程ね。でも私が見たところリエラ嬢もまだシェイドに気持ちがあるように思うんだけどね。だってさ、距離の取り方が均等って凄くない? そんなの、常に見てないと無理だよねえ? アリサ」

 思わずハッと顔を上げれば生徒会副会長を務めるアリサから冷ややかな視線が返ってきた。

「……嫌いな相手も警戒しますから。気にすると言ったらそうですよね」
「──え。あー、そっかあ」

 ささやかな期待はアリサに容赦なく切り捨てられた。キラリと光る銀縁眼鏡は自分と違い伊達ではなく、その正論に余計に落ち込んだ。

「まあまあ、いつまでも引き摺ってるならさ、謝ればいいんじゃない?」
 あっけらかんと解決策を提案するクライドに恨めしげな目を向ける。
「……しかし、俺にはアロット伯爵家からリエラ嬢に近付かないようにと警告文が届いておりまして……」
 アリサが視線も上げずにわぁーお、と呟いた。

「とはいえ何年前の話だい? ああ、そうだ。彼女の兄が学園にいるから聞いて見ればいいんじゃないかな? 一族で君を嫌っているかどうか、その反応で分かるだろう?」

 ……何だか暇つぶしにでもされてるような気がするのは気のせいか。
 そんな顔をしていたのだろう。こちらを見てアリサが冷たく告げた。
「ウザいからよ。仕事が捗らないからさっさと解決させてテキパキ終わらせて」
「……」
 この人もまた、今までの令嬢とは違うと思った。