同時に困惑した。
 一歩寄れば一歩距離を取られるこの状況に。
 気付き愕然とした。
 彼女は未だ自分を許していないのだと。

 シェイドの中で彼女は自分を正しき道へ導いてくれた恩人で、憧れと初恋が同居した相手。
 嫌われているなら近寄るべきではないと、泣く泣く諦めながらも、シェイドはずっとリエラを視線で追いかけていた。
 
 だからクライドにもあっさりバレたのだ。
 野暮ったい容姿の自分の事情にも、彼は薄々勘付いていたようで、シェイドの白状を楽しそうに聞いていた。

 苦い思い出なんて話したく無かったけれど、クライドの婚約者候補にリエラの名前が上がっているとチラつかされては、話さざるを得なかった。
 
 彼女がそう望むなら、自分はもう関わらない方がいいとは思う。けれどクライドがもし彼女を婚約者にと望んでいるのなら、話す事で止められたらと思ってしまった。
(せめて俺の知らない相手と、知らない場所で幸せになって欲しい……)
 そんな身勝手な願望に縋りながら。