『可愛らしいご子息ね』

 そう自分を品定めする婦人たちの三日月の眼差しに、余計その思いが顕著になった。

(気持ち悪い)

 両親はシェイドが身分の高い貴族に好かれるのを喜んでいたから、彼の気持ちなんて気に留めなかった。むしろ、シェイドが彼女たちの望むような態度を取れなければ諌めた。

『お前なら家格が上の令嬢へも婿入りできる。そうだな、女を学ぶ為、愛人となる覚悟もしておけ。やがては伯爵家、侯爵家だってお前に一目置くだろう。何、我が家はお前の弟に任せればいい』

 シェイドが七歳の頃の言葉だった。
 父の言葉は理解できず、それでも自分がやがて女たちに放られる事だけは分かって、見捨てられたような気分になった。
(弟が羨ましい……)
 貴族という枠は越えられなくとも、そこにあるのは平穏に見えたから。
 
 それから沢山の女性に引き合わされた。
 皆期待に満ちた顔で、同じ事を言う。沢山の婚約者候補たち。未来の孫の容姿に期待する夫人もいた。
 シェイドは父が求めたように、紳士的に振る舞った。

 ──けれどある時、気付いてしまった……