「お前……私に何て事を……っ」
リエラはふっと息を吐いた。
正直低い声を出されたところで怖くはない。
そもそもリエラは異性を苦手としているが、反面、女性とばかり過ごしてきた為に、女の人を怖いと思った事は無いのだ。
リエラは伯爵令嬢ではあるが、家柄は悪くない。ベリンダに意見を言えるくらいの立場は持っている。
しかしベリンダは今まで逆らわれる事など無かったのだろう。
彼女と家格が対等以上の令嬢令息はいたけれど、わざわざ衝突しにいくような者はいない。王族の婚約者候補という身分が彼女を守っていたのもあるし、彼女の性格は、皆面倒だと分かっていたからだ。
──つまり、彼女はこういう態度に慣れていない。
リエラはここぞとばかりに蔑んだ顔で顎を上げ、ベリンダを見下ろした。
「人の話をまともに聞けず、理解できないあなたに、医師の処方を要すここは相応しくありませんわ。須く出て行って下さいます? 迷惑極まりありませんので」
案の定ベリンダは大声で反発した。



