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「なぁ。さーやって、実はレズなんか?」
今も昔も、芹香はいつも突然だった。
「んふっ!ちょ…なっ、なによいきなり…」
「せやからなぁ、なんでさーやは彼氏つくらんのや?」
「いや、言い方。ぜんぜん意味違うじゃない…。牛乳飲んでるときにやめてよ…」
「もー、びっくりしたよー…」と小さく愚痴りながらも、机にこぼした牛乳を丁寧に拭いている紗夜。
「昼休みでもないのに、休憩時間に牛乳のむJKってなんやねん」
芹香は面白そうに紗夜を眺めている。
「いいじゃん別に、のど乾いたんだし…。てか、なんでって言われても…。んー、だってさ、なんか面倒くさくない?」
「めんどくさい?」
「うん。なんかこう…よほど気が合う男の人となら大丈夫なのかも知れないけど、そうでもない人とずっと一緒にいるのって疲れるしさぁ」
紗夜はそのまま言葉を続ける。
「それにね、相手にもそんな気を遣わせたくない…っていうか。お互いにそんなこと考え合ったりするのって、なんか面倒くさい気がしちゃうんだよね」
「そんなん別に、お互いにこう…めっちゃ好き!になれば、普通気にならんもんとちゃうか?」
紗夜は訝しげな表情で、首をかしげた。
「そうなのかな?私って今まであんまり、誰かをこう「めっちゃ好き!」って思ったこと無いからなぁ」
すると紗夜は、何か良いことを思いついたような素振りと明るい声で言った。
「多分ね、まだちょっとレベルが足りてないんだよ。きっと」