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紗夜は小さく首をかしげると、ぶにっと突き出した桃色に光る唇に人差し指を乗せ、少しだけ考える素振りを見せた。


「…んー、意味ねぇ。てかアイツってさ、あんま考えて行動したり物言ったりするようなタイプじゃないのは芹香も知ってるでしょ?そんな深い意味なんてあるのかな…って思うけど」


そう言いながら、おもむろに窓からの景色を視界に入れた紗夜。


紗夜の席はちょうど陽当たりの良い、窓際の一番後ろの席。


休み時間の二人は、紗夜の机にちょこんと腰を掛けて足をぶらつかせる芹香がいて、椅子に座る紗夜といつもこうして楽しそうに会話をする。


話の内容さえ除けば、二人の姿はとても魅力的で絵になる光景だった。


「あるんやないの?紗夜ってな、なにげに綺麗な名前やし」


芹香の言葉にふと些細な違和感を感じた紗夜は、訝しげに彼女へ振り返った。


「芹香さぁ、その「なにげに」ってのは余計じゃない?どうせ言うなら「名前まで可愛い」とか言い方あ…」