卑怯だ…。


こんなの卑怯だよ…。


まわりにみんな…人がたくさんいるところで普通、こんな話する?


ほんと…バカなの?


つかさ…泣くに決まってんじゃん…。


やだもぅ…なんなのよ…。


あはは。私、壊れちゃったかな…。


涙がぜんぜん止まってくれないよ…。


それなのに、元はといえば一番聞きたがってたのは芹香じゃない…。


なのに、拓人の話の後に「具合悪い」って走って出てっちゃうし…。


つか、具合悪いってなによ…。


もぅ…私のほうが最悪だよ…。


拓人なんかの言葉に思わず泣いちゃった…。


話を聞いてるときはなんか…ずっと胸の奥がキューっと締めつけられるような息苦しさが続いてた。


なのに、今はどこか不思議な感覚…。


体が雲みたいに、ふわふわ浮かんでいるみたいな、なんかすごく変な感じ。


でもなんか…とても気持ちいい。


これが、幸せってやつなのかな…。


……。


…へへっ。


娘でいてくれて、ありがとう…か。


…あー、嬉しかったな。


こんなにも大切にされて愛されて、こんな私を本当に必要としてくれてたなんて、いつもの拓人の素振りからは全然感じられなかった。


いい加減でガサツで、いつも自分勝手な拓人…。


その裏側にはきっと、教師だとか父親だとか、いろんなプレッシャーがあったんだろうな。


それに加えて、大好きだったお母さんを忘れられない、深い深い苦しみ…。


…知らなかったな。


いちばん拓人と長い時間、一緒にいる私が。


いちばん拓人に必要とされてたはずの私が、ぜんぜん気づけなかった。


てか…気づいてあげられなかった。


ダメだね、私…。


自分がほんと、イヤになる…。


だからせめて、私にもできることがしたい。


私が拓人の悲しみに気づいてあげられなかった代わりに、少しでも拓人の願う娘になってあげたい。


拓人が心の底から愛した、お母さんみたいな人になりたい。


マジでそう思っちゃったよ…。


どうしよう。


どうしたらいいんだろ?


どうしたら拓人の幸せに…お母さんみたいな人になれるのかな…。