…とまぁ、こんな感じだ。
名前の意味ってよりも、お前の「さや」って名前は、たぶん美月が残してってくれた名前。
そして「紗夜」って字は、悩んだ末に俺が考えた名前だよ。
少しでも美月との繋がりを、お前に残してやりたかったから。
月が似合う、きれいな夜。
美月と紗夜。
……。
ほんと、色々あったんだ…。
俺がダメなせいでみんなに迷惑をかけて、たくさん遠回りして。
それでも、どうにか答えが見つかった。
…でもな。
こうやって教師なんて偉そうな仕事してるけど、元々がダメな俺だしな。
たまに、挫けそうになるんだ。
仕事で辛いことがあったり嫌なことがあれば、何もかも全部投げ出して、どこかに逃げ出したくなる時もあった。
紗夜が寝入ったあと、美月の写真を眺めながら一人で酒飲んで、アイツの面影に寄り添ったりして。
男のくせにめそめそ泣いて、気づけばそのまま朝を迎えるなんてのは、数えきれないだけあった。
いっそ誰かが、俺の頭の中から美月のことを消し去ってくれたら…。
バカみたいに何も知らないで、新しい人生なんてのを迎えられたら楽なのかな、なんて考えたりもしてよ。
ほんと、つくづく救えない奴だよな。
自分がどれだけ弱くてダメな人間なのかってのを、美月を失ったあの時から何度も何度も痛感したよ…。
けど…
俺がそんなダメな奴とも知らないで、いつもバカみたいに無邪気な笑顔で寄り添って、俺を本当に必要としてくれる奴がいた。
俺にとって、それが唯一の救いだった。
それが、お前。
紗夜だよ。