――八日目の夜。


美月の親父さんと交わした約束の期限を、明日に控えていた。


その日の夢は、明るい昼下がりだろうか。


俺はあの子と一緒に、いつもの部屋でくつろいでいた。


女の子は小さな身体をテーブルに半ば乗り上げるようにして、らくがき帳かなにかに熱心に絵でも書いて遊んでいた。


俺は女の子が、なにをそんなに熱心に書いているのかと思い、横から何の気なしにそっと覗いてみた。


短くなった青の色鉛筆を小さな手で握り締めて、絵ではない…なにかの文字を書こうとしているようだった。


「…なにを書いてるの?」


俺が隣から訪ねると、女の子はこちらを振り向いて、難しい顔で答えた。


「…わかんない」


そう答えると、またすぐにらくがき帳に顔を戻した女の子。


「おなじひとが、なんかいもゆめにでてくるの」


奇妙なことを口走る女の子は、それでも色鉛筆を走らせる。


「夢に出てくる?」


「うん。かみのながい、おんなのひと」


俺の言葉は止まった。


それでも女の子は、熱心に文字を書こうとする手を止めずにいる。


「そのひとがおしえてくれるの。だけどね、ぜんぜんかけないの。でもそのひとはおこらないで、ニコニコわらってくれるんだよ?」


話しながら女の子は、その夢を思い出したのだろうか。楽しそうににやにやと表情を緩めている。


「だからね、れんしゅうしてるの。じょうずにかけたら、そのひとがうれしいかなっておもって…ほら!」


できた!と言って、満面の笑みを浮かべた女の子が見せてくれた、たくさんの青色が描かれたらくがき帳。