――その日は、五日目の夜。
夢の中は、まばゆいばかりの夕陽が射し込む、オレンジ色の景色。
よく見るとそこは、今も俺たちが住んでいるアパートの部屋だった。
カーテンも開けっ放しで、なんとも生活感を感じさせない殺風景な部屋。
装飾やら家電製品の多くないその部屋には、新聞やら弁当の殻が床に散らかってて、それに混じってなぜか…子供のおもちゃが一緒に転がってる。
小さな子が外で遊ぶような、使い古した安物の玩具。
よく見るとその部屋の一番大きな窓辺には、三歳くらいの小さな女の子が背を向け、長い影を作って外を眺めていた。
「…ただいま」
夢の中の俺が不意に声を掛けると、その子はゆっくりと振り向いた。
伸び始めた髪を、子供の悪戯のように後ろで二つに結わえていて、大きくて印象的な瞳で俺を見つめる少女。
どこか美月に似て、彼女じゃない女の子。
俺はふと、何かを感じた。
名前は知らない…。
だけど俺は、この子を知っている…。
すると女の子は、満面の笑みを浮かべながら、俺にこう言った。
「おかえりなさい、ぱぱ!」