今思うと、美月の親父さんのあの言葉。


たぶん、俺のことを試してたんだろうな…。


この抜け出せないドロ沼から這い上がって、一人の子供の親として自立して、命を守っていく覚悟を決められるか…。


でなきゃ美月を忘れて…人としての全てを棄てて、バカみたいに生きるか…。


まぁ、そりゃそうだよ。


親父さんからしたら、最愛の一人娘が命を捨ててまで遺した、かけがえのない大切な命だからな。


それに最悪、俺は美月を殺めた一人に数えられてもおかしい話じゃなかった。


それで情けない話、絶望に打ちひしがれた俺みたいなダメな人間には、親父さんの提案をほんの少し魅力的に感じたんだよ。


俺みたいなやつが中途半端に踏ん張っても、このまま生きる理由だの這い上がる意味ってのが、本当にあるんだろうか?


そんなんで、俺と美月の子供は幸せなんだろうか…とかな。


自分が果たさなきゃならない責任を、誰かのせいにしないと何もできないような…ほんと最低の人間だったよ、俺は。


それでも俺は、甘さだの後悔だのを捨てて、ただひたすら俺なりの決意を見つけ出そうと努力した。


二日経って、三日経って…。


四日目でも、何一つ答えが出せなかった。


ひたすらに考えても、最善の道を選ぼうとしても、心がぜんぜん追いついてくれなくてな。


そんな自分の努力が虚しく思う反面、それだけ俺にとって、美月の存在が何よりも生き甲斐だったんだ…って思うと、改めて彼女のことを誇らしくも思った。


そして、何も変われないまま、五日経った頃の俺。


その時にはもう、自分じゃ何もできない、何も変われやしないんだろうな…って、半ば諦めてたのかも知れない。


そんななか、五日目が終わろうとした時。


悩みに悩んで、悩み疲れた俺。


そんな俺に少しだけ、とある変化が起きた。


なんかな…その日の夜から、不思議な「夢」を見始めたんだ。