目を閉じると、今でも浮かんでくる。
俺を呼ぶ彼女の楽しそうな声や、いつも見せてくれた明るい笑顔。
二人で一緒にいた、あの幸せな時間。
もう二度とは戻らない、楽しかった思い出ばっかり頭の中に甦ってきて、さすがに涙が止まらなくてな。
そのあとの記憶がおぼろげで、正直あんまりねぇんだよ。
美月はすぐに退院して、通夜や葬式も静かに…しめやかに行われたらしいんだけどな。
もちろん俺も参列してたらしいけど、ずっと心がどっか行ったような…死んだように無反応だったらしい。
…そうだな。
多分俺は、美月が死んだことを悟ったあの一瞬で、完全に絶望の淵に叩き落とされたんだと思う。
言葉どおり、もう何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない、深い果ての果てにな…。
もう生きる気力も這い上がる力も、何もかもを無くしたような気がした…。
あの時の俺は、頭の中から言葉を忘れるくらい考えることをやめた。
そして、ただ暗闇の中で一人彷徨ってた。

