まるでなにか…珍しい動物でも眺めているかのような、紗夜の好奇な視線。


こんなにも上品そうな子が、訛りのきつい喋りをすることが不思議…というよりも、なんだか可笑しくて紗夜は思わず芹香に見とれてしまっていた。


それはある意味失礼とも言えるような行動だったが、当の紗夜には一切悪意というものはなく、ただ純粋に沸き上がってきてしまう芹香への興味を隠せないでいるだけ。


というよりも、むしろ本人からすると隠すつもりなんて微塵もない、言うなれば彼女らしい素直でまっすぐな眼差しだった。


その時、不意に二人の目が合う。


「…なに見とるんや?」


視線に気づいた芹香に声を上げられ、紗夜は彼女を怒らせてしまったかと思い、思わず無意識に謝ってしまっていた。


「あ、ごめん。なんかその…ね…」


行き場を失い、気まずそうにコロコロと迷子になる紗夜の視線と詰まった言葉を聞き、にこりと顔を微笑ませた芹香。


「ええんよ、別に。怒っとらんし」


芹香は微笑んだまま、言葉を続けた。


「そんなじっと見られたら、うちに気があるんかな、って思ってまるやん」


言葉に詰まる紗夜。


「あ、うん…」


「てか、そんな関西弁って珍しいんかな?言うてもうちは、普通に喋ってるだけなんやけどな」


確かに関西弁なんて、テレビの向こう側から流れてくるのを聞き入れるくらいしか紗夜には面識がない。


しかし今は、生で聞く関西弁だけではなく、目の前にいるふんわりと可愛らしい生き物から発せられる謎の言葉があまりに奇妙すぎて、なかなか心が追いつけていないだけのことだった。


「それにしてもあんた、お人形さんみたいに可愛いなぁ。よかったらやけど、うちの最初の友達になってくれへんか?」


頬杖をついたまま、えっ…と声も無く、目を丸くした紗夜。


「うん。いいけど…」


その言葉を聞いた芹香は微笑んでいた表情をさらに緩ませ、嬉しそうにコクコクと頷いた。


自分からの「可愛いなぁ」の褒め言葉に、まるで否定も反応もしない紗夜。


かと言って、無理に取り繕う様子も見せない紗夜を見て芹香は、少なからず嘘のない素直な子だな…と感じ、それだけで少し嬉しく思えたのだった。