やや茶色に染めた、短めの髪。
無精髭が妙に似合う、少し色黒の整った顔立ち。
細身のすらりとした体系に、かろうじて正装だと見てとれる程度にくたびれた、紺色のスーツ。
教壇に着くや、椅子に座り込んでしまった男性は、うーんうーんと小さく唸りながら、その顔を上げることさえできない様子を見せていた。
「先生、大丈夫なん?保健室いったほうええんやないか?」
「いや、ちょっとな…。保健室には行けない事情があんだよ…」
男性は悩ましげな表情を浮かべ、額を手で押さえながら、芹香に応えた。
「そうなんか?無理せんで休んどいてな」
「あぁ、悪い。学級委員、あとは頼むから…」
「はーい。先生は休んどき」
ちなみにこのクラスの学級委員を、今学期からは推薦多数で選ばれた芹香がやっていた。
男性は手を弱々しく上げ芹香に返事をすると、椅子にもたれた体勢の悪いまま、静かにもゆっくりと眠りに落ちていったのだった。