予鈴が鳴ってから、すでに十分以上は過ぎている。


にもかかわらず、教室には次の授業である国語の教科担任がまだ姿を現さない。


それに際し、教室にいる生徒たちの騒めきは思わぬ展開に気を駆られ、少しずつ大きくなり始めていた。


「さーや。たっくんどないしたん?」


芹香が、紗夜へ発した何気ない一言。


それを耳にした他の生徒たちの視線が、一斉に彼女へと向けられる。


「…し、知らないよ!」


思いもしなかった芹香の言葉に、思わず身体を強ばらせるようにして慌てふためいた紗夜。