当たり前にある、三つ葉のクローバー。
幸せの四つ葉なんて誰も望んでない。
それなのに、私たちには普通の姿さえ叶わなかった。
…ヘンな話だよね。
「二つ葉」なんて誰かがちぎらないと、なかなか出来ないはずなのに。
引きちぎられた家族。
生まれたばかりの私を残して、消えてしまったお母さん。
アイツは…拓人はその時、どう思ったんだろう。
なにを…どう感じたんだろう。
お母さんが、どこにもいない世界。
一番愛した人がいない、この世界。
二人で夢見た幸せな未来をボロボロに挫かれて、唯一残されたのは、泣くことしかできない生まれたばかりの私。
ただ現実は残酷で、ほいほいと止まったり戻ったりなんかしてくれない。
きっとこれから待ち受けているのは、父と娘がひたすらに足掻いて生きていくだけの、なんでもないような二人の物語。
そういえば、芹香がさっき急に聞いてきた話なんだけど…。
今思えば私はきっと、なんだかんだ言って幸せなんだと思う。
自分勝手で我儘で、ほんとダメな親だけど、今まで私を精一杯に育ててくれた。
言われるまで気づかなかったし、考えたこともなかったけど、それだけで私は充分に幸せなんじゃないかな、って思うんだ。
そう、私はね…。
……。
拓人は…。
拓人は、どう思ってるんだろう。
拓人は、幸せなのかな?
でも、そんなこと間違っても聞けないよ。
そんなことしたらきっと、恥ずかしすぎて死んじゃう…。
死んじゃう、けど…。
本当はどこか、ちゃんと繋がり合えてないダメな親子みたいで、少し寂しいような気もするんだよね…。
あはは。私がこんなんじゃ、きっとお母さんにも怒られちゃうんじゃないかな。
……
…なんかヤダなぁ。
こんな自分、ほんとは好きじゃないのに。
なのに、私と拓人はこれくらいの関係で、今のままの距離がちょうどいい。
そうやって、無理やり自分に言い聞かせてる、素直になれないダメな私がどこかにいるんだよね…。