あれは確か…今年のお正月だったかな?


いつものように拓人と二人で、長瀬の家で年越しを迎えに行ったときのこと。


夜の晩酌を終えた拓人は、毎度いつものように酔っ払って寝ちゃうんだけど。


後片づけが終わった私が居間でゆっくりしてる時に祖父が、拓人とお母さん…二人の昔話をちょっとだけしてくれたの。


拓人が、今の私と同じ十七歳。


お母さんが一つ年下の十六歳だった時、私はこの世界に命を授けられた。


よくさぁ「新しい命が芽吹いたー」とか言うけど、そんな喜びに浸る間もないくらい、それからの二人の道のりは平坦な道じゃなかったらしい。


まぁ、そうだよね。


あまりに若すぎる二人。


ろくに社会のことも知らない、常識さえもままならない未熟な二人が結婚して、さらには出産まで望んでいることを一部の親戚や世間の風はとても厳しく批判した。


これは本当に、幸せな結婚なのか?


愛のある出産なのか?って。


ひどい時には、お母さんの妊娠も「過ち」だって罵られることもあったらしい。


……。


それでも拓人は、これから生まれてくる我が子と愛する妻を守るために、高校に通いながら幾つものアルバイトを掛け持ち、必死になって生計を立てようとした。


小さくたって構わない。


どんなに貧しくてもいい。


ただ幸せな家庭と明るい未来を心から願い、二人は一緒になった。


その矢先に、拓人は「最愛の女性」を。


私は「愛されるべき母」を失ったの。