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――さーやは今、幸せか?
…ていうかさぁ、芹香。
仲のいい友達に向かって、普通いきなりそんなこと聞くものなの?
それに、だいたい私が「幸せです」なんて即答できるような生活してないのも、ましてやそんなリア充じゃないも芹香が一番知ってるじゃない。
ん、まぁ…でもね。
芹香が何を聞きたかったのか私にはよくわかんないし、もしかしたら芹香が知りたいこととは少し違うのかも知れない。
けど、私には「幸せ」っていうものとは、まったく逆のものが一つだけ。
きっとこれはみんなと違って、私にとって「不幸」なことなんだな…って、思えることならあるんだよね。
それは、芹香も知ってること。
…そう。
私には「お母さん」がいない。
いない…っていう言い方は、少し違うのかな。
顔は写真でしか知らないし、声も聞いたことがない。
もちろん、温もりだって知らない。
聞いた話だとお母さんは私が産まれてすぐに、まるで私とすれ違うかのようにこの世から去っていった。
残っているのは「とても綺麗な女の子」だった、っていう印象しか私には与えてくれない、写真に写ったお母さんだけ。