「せやけど…あっ!じゃあ、こうしよか?もしたっくんが、さーやのパパやなくって…」
「パパ」のところで、おえっと顔をしかめた紗夜。
「フツーに知り合いとかで出会ってたらどうや?ナンパでも合コンでもええし…な?ときめかへんか?」
「……」
紗夜は、不意に想像してしまった。
出てきたのは、年甲斐もなく周りの誰よりもはしゃぎ倒す、みっともない拓人の姿。
その恥ずかしすぎる父親に「やめて!」と心で叫ぶ紗夜だったが、そんな気持ちを知ってか知らずか徐々にその勢いは右肩上がりに増していく。
(まじほんと、歳考えろよ…)
これはあくまで、紗夜の想像に過ぎない。
しかしいくら想像だとわかっていながらも、思わず本人を見つけだしてぶん殴りたくなってしまった紗夜。
残念すぎて、もう言葉も出ない。
そのとき紗夜は、ふと我に返った。
目の前には、意地悪げにニヤつかせた表情でこちらを眺めている芹香がいる。
それを垣間見た紗夜は、自分にまとわりついていた奇妙な感覚にようやく気がついたのだった。
(てゆーか芹香。あんた一体、さっきから私に何がしたいのさ…。)