それでも、他の誰も知らない…お互いに親友と呼びあえる関係だからこそ、芹香だけが知っている紗夜の姿がたくさんあった。


普段の少し派手な外見とは違い、話してみると意外にも真面目な紗夜。


そして時にはガサツで、時には臆病で。


ちなみに彼女は今でも泳げないことを隠すため、プールの授業は「化粧直すのめんどくさい」という理由でいつも見学する。


そして見た目の割に少女趣味の紗夜は、ひっそりとパンダの化粧ポーチとパンダの筆箱を愛用している。


「ねぇねぇ芹香?パンダってさ、どうしてこんなにカワイイんだろうね。私もいつかパンダになれるかな?」


そう紗夜がうっとりと頭のおかしな話をしているのに対して、芹香が「パンダなんて二色のクマやんか」と、つい本音をこぼした日。


その日の紗夜は一日中、彼女と口をきかなかった。


いつだったか、珍しく遅刻ギリギリに慌てて登校してきた紗夜。


その日は少しだけ寝坊した彼女は、古い親友でもある薄汚いパンダのぬいぐるみを間違えてカバンに入れてきたことがある。


後から聞いて「そんなフワフワな教科書あるかい!」と大笑いした芹香だったが、その時の紗夜はいつになく迫力があった。


「ねぇ芹香?今日一日、私のカバン勝手に開けたら絶対にダメだからね…?もし開けたら、裸にひん剥いて川に投げ捨ててやるから…」


「な、なんや一体…」


紗夜の口がほんの少しだけ悪くなったのは、もしかしたら自分にも責任があるのだと芹香は感じていた。