世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


「……えっと、あなたは?」

問いかけると、硝子玉のように澄んだ碧眼(へきがん)があたしをまっすぐに見つめる。


「僕の名前は水瀬凪(みなせなぎ)。君は?」
来栖琳夏(くるすりんか)です」

男の子───凪くんは「琳夏……ってことは、リンちゃんだね」と微笑んだ。

その顔があまりに綺麗で、ドックン、とひとつ心臓が跳ねる。


「保健室に来たってことは、リンちゃん体調が悪いんだよね?」
「あ、はい……ちょっと頭が痛くて」
「それは大変だ。でも、月島先生はまだ戻ってこないから、そこで寝てゆっくりしていなよ」


立ち上がった凪くんは、どこからか毛布を引っ張り出してきて、ふわりとあたしにかけてくれた。

「ありがとうございます」


凪くんが椅子に座ったのを確認して、あたしは再びゆっくりと目を閉じた。