世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


「大丈夫?」

ふと、声がした。


顔を上げると、部屋の隅の椅子に男の子が座っていた。


「え……」


そう声が洩れたのは、男の子がいたことに驚いたからだけじゃない。



その男の子が、珍しい容姿をしていたからだ。



髪の色も、睫毛も、肌の色も、すうっと溶けて消えてしまいそうなくらいに白い。


まっすぐに向けられたその瞳は、海が溶けたような、透き通った青だった。



「綺麗……」


気付けばそう、口にしていた。


男の子は驚いたように目を見開いてから、照れたような笑みを浮かべる。


「ありがとう。君はそう言ってくれるんだね」



人間離れした美貌を持ったその男の子は、そう言って切なげに目を細めた。