養護教諭を務めている月島幸子は、今日も保健室の一角で話す男子二人を微笑ましく見守っていた。
「この間の富柚子がマジで可愛くて」
「それを言ったらリンちゃんもこの間……」
彼女のことを自慢げに話す二人は生き生きとしていて。
思わず笑みが溢れる。
「まーた彼女の話?本当に二人は彼女ラブなんだから」
「そうだよ。悪いか」
「だって好きなんだもん。しょうがないよね」
声をかけるとそう言ってまた話し出す二人。
どうやら、両者共に保健室で恋が発展したらしい。
……保健室は恋するところじゃないわよ!
と言いたいところだけれど、彼らのように保健室で出会った彼が今や夫なのだから、何とも言えずに言葉を飲み込む。
「いいわね。青春って感じで」
洩れたつぶやきは、蝉の声にかき消されていった。
了



