世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


「僕なんかがリンちゃんの隣に並ぶことなんてできないと思ってた。だから、夜でも外に出られないなんて嘘ついちゃったんだ。ごめん」

私の手を引きながら、凪くんがぽつりとつぶやいた。

「ううん、大丈夫」

首を振りながら答える。


校庭には近づかないで、木のそばのベンチに座る。


校庭はがやがやと賑わっているけれど、ここは対照的に静かだった。

パラパラと小さな花火が上がる。


「……綺麗、だね」
「見えるの?」
「うん。うっすらと。それに、良い音」


花火を見上げたまま、凪くんがふっと笑った。

儚くて、美しい。


それは、形容できないくらいに、ただひたすらに綺麗で。



「これから先、リンちゃんに迷惑ばっかりかけるかもしれない。嫌な思いもさせてしまうかもしれない。それでも、僕と一緒にいてくれる?」


……いるに決まってる。


うなずくと、綺麗な顔がゆっくり近付いてきた。

自然と目を閉じると、額にまた柔らかな感触。


「ごめん。さっきフライングしちゃって。嬉しすぎてついしちゃった」
「……いいけど。おでこ、なんだね」


え、と凪くんが目を見開く。

だって。

だって今、せっかく目を閉じたのに。