世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


「だからお願い。あたしは凪くんが好き。凪くんとずっと一緒にいたい」


海色の瞳が揺れた。そして、透明な雫がこぼれ落ちる。


「ありがとう、リンちゃん」


凪くんに微笑み返す。

そのとき。



窓の外に、大きな花が咲いた。


「花火……?」


それは花火だった。

麗涼祭の企画なのかもしれない。


次から次から打ち上がり、夜空を明るく照らしていく。


「綺麗……」


思わずつぶやきが洩れた。

「花火、綺麗?」
「綺麗だよ、とっても」
「リンちゃん」

ふと、凪くんが名前を呼んだ。
「ん?」と振り向くと、一瞬額に柔らかい感触がした。


「実はね、一個だけ嘘ついてた。僕本当は、外に出れるんだ。リンちゃんが言った通り、夜の今なら」
「え……」


一瞬の出来事に驚く暇もなく、衝撃の事実が告げられる。


「僕と一緒に花火、見てくれる?」
「……っ、うんっ」


そのまま凪くんに手を引かれ、校舎から出る。