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「付き合うことになった」
そう言って嬉しそうに顔を綻ばせる日向。
「よかったじゃん。おめでとう」
「ああ」
照れ笑いを浮かべる日向の耳には、多くのピアスがある。
告白が成功したらしい。
「南さん、だっけ」
「そうだよ。麗涼祭に行く約束した」
【麗涼祭】というワードにどきりと心臓が音を立てる。
「お前は?彼女と行かねぇの?」
「リンちゃんは彼女じゃないって何回も言ってるだろ」
「でも好きだろ、お前。たぶん、向こうも」
ふるふると首を横に振る。
「きっと向こうは違う。それに、仮に互いに想っていても、付き合うことはない」
「なんでだよ」
「僕は普通じゃないから」
日向は軽く首を横に振った。
「お前、普通だよ。考え方はちょっと大人びてるけど。普通に勉強して、話して、色んなことに興味持って、恋して」
「でも、容姿が明らかに違うだろ」
「……お前が好きなやつは、お前の容姿も性格も、全部肯定してくれたんじゃないのか?それも全部ひっくるめて好きなんじゃねぇのかよ」
「……でも、できることは限られてるし」
うつむくと、長いため息が降ってきた。
「でもでもうっせーな。できることは限られてるって言うけど、お前にしかできないこともあるだろ。彼女を幸せにするのは、お前にしかできないことなんだぞ」
「それは……」
「自分を否定的に見て断るのは、一番彼女を傷付ける。第一、お前はそんな奴じゃないだろ。自分らしく生きるって言ってたじゃねぇか」
……そうだ。
僕は僕らしく生きると決めたのだ。
僕がやるべきことは、"今"を後悔しないように、生きるだけ。



