「ほら。やっぱり泣いてる」
「泣いて、ない」
「見えるから」


本当に見えているのかは分からない。

けれど、凪くんの目はどこまでもまっすぐで、海色の瞳はひどく神秘的だった。


「……リンちゃん。麗涼祭には、やっぱり行けない。リンちゃんは、友達と行くべきだよ。友達と楽しんでおいで」
「でも、あたしは」


凪くんは悲しげに目を細める。


「ごめんね、リンちゃん」


一言。それだけだった。


「あたし……待ってるから。保健室で、凪くんのことずっと待ってるから」



その言葉に、返事はなかった。