世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


「人の容姿をどうこう言う権利なんて、他人には無いと思います。先程の言葉、撤回してください」


震える足で立ち、はっきりと言い放つ南さん。

逆上した男子は、彼女に向かって手を振り上げた。


……危ない!


そんな叫びすら出ない自分が、惨めで仕方がない。


結局あたしは、凪くんも南さんも守ることなんてできなくて。


ただ無力の傍観者として立っているしかできないんだ。


「何してんだよ」


そんな声とともに現れ、彼の振り上げられた腕を掴んでいたのは、背が高くてピアスをつけた男子だった。


「は、離せよ……!」


さっきまで偉そうな口ぶりだった男子が、彼を見て弱々しい口調に変わる。


そして、逃げるように去っていった。