世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


強く唇を噛みしめる。


……なんで?


なんで凪くんはこんなに言われなきゃならないの?


こんなに綺麗なのに。


この美しさと儚さは、彼にしかないものなのに。


「そんな真っ白な髪、見たことねぇよ。日本人じゃないんじゃね?」



じわりと涙が浮かんだ、そのときだった。


「あの」



突然聞こえた声は若干震えていて。


そして目の前に現れた、細くて小柄な影。


それは、クラスメイトの南さんだった。

いつもクラスの隅で読書をしているような、そんな女の子。


運動が苦手らしく、いつも必死に体育の授業を受けている、気弱な女の子。

そんな印象。



だけど。


まっすぐに立ち向かっていくその背中は、本当に大きくて。

そして、カッコよかった。