世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。




それからあたしは、週に一度だけ授業の間に保健室をたずねるようになっていた。

いつも日の当たらない保健室の隅で読書をしている凪くん。


「……凪くん!」


名前を呼んで寄ると、凪くんは僅かに目を細めた。


「リンちゃん。ごめん、今日はよく見えない日みたい」
「うん、分かった」


うなずいて、いつものソファーに腰をおろす。


「今日は、凪くんに提案があって来たの」


凪くんはコテン、と首をかしげた。

白銀の絹髪がさらりと揺れる。


「凪くん。あたしと麗涼祭に行かない?」
「……れい、りょうさい?」
「うん。この学園でもうすぐ開催される夏祭りみたいなものなんだって」


凪くんの顔にふっと影が落ちる。


「リンちゃん。僕は外に、出られないんだよ」
「うん。知ってる。でも、お祭りは夜だからさ」
「無理、だよ」


凪くんが首を横に振ったそのとき。