世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。






「あら、ごめんなさい!ちょっと校内の見回りをしていたの!」


保健室の戸を開けた先生が、焦ったようすで近付いてくる。


「あ、いえ大丈夫です」


あたしはソファーに座ったまま、首を横に振った。


先生はあたしのそばまできて、隣の椅子に座っている凪くんに視線を向けた。


「あら凪くん。今日は調子がいいみたいね」
「うん。先生のこともちゃんと見えるよ」
「それはよかった」


穏やかな口調のまま、先生はあたしに視線を戻す。

「お名前とクラス、それから保健室に来た理由を教えてくれる?」
「あ、はい。一年A組の来栖です。頭痛がしていたので来ました」


うなずきながら先生はペンを走らせる。

ひととおり書き終わったあと、先生は紙をおいてあたしと凪くんを交互に見た。


「同級生だものね……友達だったの?」
「いや、今知り合ったところ」

あたしもうんうんとうなずいてみせた。