「……とかいっても、リンちゃんはたまたま今日体調不良でここにきただけだもんね。毎日いるような僕とは違うし。ヘンなこと言って、ごめん」
沈黙を破ったのは凪くんの方だった。
できるだけ明るく、だけどどこか悲しそうに凪くんは言う。
「……いいよ」
気づけばそう、口にしていた。
本能的に言葉を発するのは、これで二度目だ。
どうやら凪くんといると、自分の意思よりも直感的に言葉を発する方が多くなってしまうのかもしれない。
「あたしが話すよ。凪くんがききたいと思ったこと。世界のこと」
もう一度言うと、凪くんの瞳が見開かれた。
そして、ふ、と柔らかく目尻が緩む。
浮かべられた微笑は、凪のごとく穏やかで、包み込むようなあたたかさがあった。
「ありがとう。リンちゃん」
凪くんはそう言って、また笑った。



