世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


凪くんは手に持っていた分厚い本の表紙を静かに手でなぞった。

ス、とわずかに擦れる音がする。


「ねぇ、教えて。リンちゃん」
「え?」


本の表紙を撫でていた凪くんの視線が上がる。

綺麗な海色の瞳と、まっすぐに目があった。


「教えて。外の世界のこと」


沈黙が流れ、世界中から音が消えたかのような錯覚に陥る。


その一瞬は、永遠のように感じられた。