世界中に溢れる"美しい"を、ぜんぶ。


落ち込むあたしに、凪くんは「でも」とつぶやいた。

「リンちゃんが、ちょっと羨ましい。太陽のしたで、思い切り走ったり遊んだりできるのは、素直に憧れるよ」
「え……?」
「色素が薄いせいで、紫外線にも弱くって」

凪くんは切なげに目を細める。
ブルーの瞳に、悲しみの色が浮かんでいるように見えた。


「僕は、外に出られないから」


そんなのあんまりだ。

ぐっと唇を噛みしめる。


「リンちゃんって、何部なの?」

凪くんの言葉に一瞬ためらってから、「陸上部」と細く告げた。


「ふふ、そっか。太陽のしたで活動する代表的な部活動だね」

凪くんのようすにまた心が締め付けられた。


凪くんはふっと窓の外に視線を投げる。


「今日も部活?」
「うん。あたしは出れるか分からないけど」
「体調不良だもんね。こんな炎天下に活動したら倒れちゃうよ」


うん、と返事をしてふと気が付いた。

頭の痛みがだいぶんよくなっている。


凪くんが頭痛を吹っ飛ばす魔法を使ってくれたのかもしれない。


まだ倦怠感は多少残っているけれど、保健室に来る前よりも明らかに楽だ。