「その傷、大丈夫?」

僕が家に戻ると、心配する母を押しのけ、父が怒鳴った。

「お前は黙ってなさい。周一、昼間から学校さぼって、注意したクラスメートにケガさせたらしいな。先生から会社に電話があっ
たんだぞ。恥ずかしい。今から相手の家に行って謝るぞ」

「父さん、聞いてよ」

「言い訳なんか聞きたくない。いいから早く乗れ」

江田の家にむかう車の中で、僕は久しぶりに運転する父の横顔を眺めてみた。

この人は誰だろう。あまり知らない人のように思えた。

ただ、相手に呼び出された事は、僕が考え、戦う決心をするのに十分な時間を与えてくれた。