「一緒に帰ろう」

帰り道、僕達は昼間は話そうとしなかった話をした。

「私ね、不二君に声かけた時、彼氏にふられて自暴自棄になってて、何か無性に自分を傷つけたくなって、オヤジと援交してやろうって思って、あそこに立ってたの。でも、途中で怖くなって。そしたら、同じくらいの年の子が目の前を通って、今、声かけなきゃ、大変な事になると思って声かけたの。不二君がつき合ってくれたから、すごく救われた気がしたよ。ありがとう」

「僕は江田にいじめられてた。いや、彼に限った事じゃない。いろんな人間にいじめられて、その度に母は僕を『いじめがないと評判の学校』に転校させたけど、いつも結果は同じだった。いじめのない学校に、いじめが起こる原因は自分だと思ってた。どんな美しい人も腐ったミカンにしてしまうエチレンガスを発するリンゴのような存在なんだと思ってた。そう思うと何もかも嫌になってさ、今日は死に場所を探して歩いてたんだ。そしたら、倫子に出会って、こんな事もう一生ないと思ってたけど、すごく楽しかったり、熱い気持ちになれた。強くなれた気がした。家に帰っても大丈夫だって。ありがとう」