その隙に僕の下から這い出した江田が、すかさず僕の顔を蹴り飛ばして逃げ去った。

「大丈夫?」

蹴られた痛みより、倫子の気持ちを知った時の方が痛かった。

倫子が悲しい顔をすると、僕も悲しくなる。

体が熱くて、抱えきれない熱が汗や涙となって溢れ出した。

これが生きているという感覚?

感情を捨て、常に物事を第三者的に見つめるとか気取った事を言いながら、実は僕は誰とも向き合ってなかった。

僕の今までの人生こそ、僕が傷つかないように作り上げたフィクションだったんだ。