街に人があふれ出す時間になってきた。

家には戻らない。

僕は押し出されないように、足を強く踏み込む。

倫子とはここで別れなきゃ。

「倫子はそろそろ家に帰った方がいいんじゃない?」

「ああ、うん。じゃあ、一緒に帰ろうよ」

「いや、僕はまだ行く所が…」

「どこ?」

「あ、あの、そこの塾に行く時間だから」

「そっか。じゃあ、また学校で」

「うん」

ありがとう。そして、さようなら。

僕は塾に入るフリをして隠れ、倫子が帰って行く後ろ姿を見つめていた。