「え、っと」
どうやら、畔沼さんは戻って来たようです。
ぶっきらぼうな態度ながら、やや気まずそうに私を眺めている?
手にしたものを見ると、手触りの良い布で出来たかわいらしいくまさんでした。
「……代理」
ふっ、と思わず吹き出します。
代理が面白かったのではなく、言い方があまりにも乱暴だったのが面白かったので。
「代理、さん」
「じいやから、聞いた……領土侵略で、代理の者が代わりに自分の意思を利用する文化が浸透してしまった。お前が決定したことも、代理の者が自分が考えた、といって代わりに話すのが文化だったと。それなのに、いきなり連れて来て意思を確認させたのは悪かった」
「……?」
「だが、意思は本来自分で持つものでもある、ええと、何が言いたいかというと
不器用だけれど、彼なりのやさしさが伝わってくる。それが嬉しいと思いました。
「新しい、代理の人……」
胸元にぎゅっと抱き寄せる。ふわふわした感触が頬を撫でます。
リンちゃんは居ないけど、新しい代理の人が出来ました。
これからはリンちゃんの意思ではなく、くまさんの意思で生きようと思います。
「こんにちは」
耳元で声がします。
くまさんが僅かに淡く光って、話しかけてきました。
「こ、こんにちは」
「ミャクミャク星人に会ったのは初めてだけど、仲良くしようね」
「はい!」



