「俺と噓結婚して欲しいんだ」「みんなを騙すってことですか!?」

「ちょっと、待ってくれ」



畔沼が思わず腕を掴む。

彼女は、なんだか憤っているようだった。

確かに、突然この国に来た彼女に直接何か言う人など物好き以外にいないし、今後も出てこないかもしれない。そんな、評判自体が無いのに、というのは、通りすがりのおばさんを見てもわかる通りに、余計に怪しいのかもしれなかった。

代理の人無しで連れてこられた上に、突然のことで目が回っている。





じいやが横からこそっと補足してくれる。

「申し上げて良いのか迷っていましたが、

『評判も無く気持ち悪いバケモノとお見合いするなんて、彼も落ちぶれたものだ』という人もおられます」


「ミャクミャク星人は基本的に自分自身で、自分の意思を持つことを制限されておりますからね。『まるで赤ちゃんだ』、と」






「他人に嘘を吐かせて! 自分の気持ちまで売って、そんなに、軽々しく、売り渡せるものなんですか? なんで私まで嘘を吐かないといけないんだ!!!!!!! 無理です!!!目が合っただけで、体中が痒い!!!! 吐き気がする!!!! 気持ち悪い!!! なんでこんな行為に耐えてまで嘘を吐かないといけないのかわからない!!!! なにがドキドキだ!!!!

変な圧迫感と、強迫観念しか湧いてこない!!!!気持ち悪い!!!!!!!!」



「わかった!!!!!名前だけ貸してくれ!!!!!!!!!」

「何も分かりません!!!!!!!!!!!!!!何それ!!!!!!!!!!!1」

「…………えっと……どうしたらいいんだ!!!」





あっ、と彼女が我に返る。



「そうだ、家……家とお話する場合は、主に、一番古い大黒柱を通じることが多いのですが、どこにありますか」

「俺が、家と付き合っても、対物性愛は、未だに認められていない……」

「認められてないからって諦めるのは早いと思います! 私も正直、どこの馬の骨かもわからない人よりは物と付き合いたいのだけれど、

いや、それはともかく」

「うん?」

「家のことが、好きなんですよね!!!??」

「え、あ、あぁ……」