洋輔が私の部屋に転がり込んで2年近い。私の部屋は大学の裏門から徒歩2分の所にあるので、彼にとって通学に便利。
 ベタベタイチャイチャする時期はもうとっくに過ぎてしまった。2人ともそんなに甘えたがりではないけれど、最近優しさが足りない感じがする。食後の語らいが無くなった。彼は自分が欲しい時だけ私を求めるようになった。独りで燃えて独りで満足して終わってしまう。私は取り残される。まるで人形のようだ。
 それでも「気持ち良かった?」と訊かれると、「気持ち良かった」と答えてしまう。
 「愛してる」とも「好きだよ」とも言わない。
 最初の頃は優しい沈黙に包まれるのが心地良かった。
 ベッドに寄り掛かりテレビを観る。時々思い出したようにキスをする。
 今は…夕食の後テレビに見入ってしまう彼の背中に重苦しい沈黙を感じてしまう。
 もう夕食のメニューを考えるのも楽しくない。苦痛だ。彼と一緒に食べるのも独りで食べるのも同じくらいに気が重い。
 彼が自分の部屋に帰る日は心が躍る。お互いの部屋を確保しておいて良かった。あの時、ほんの暫くの間高まる気持ちを抑えていて正解だった。
 来年卒業。卒論の準備をし始めていよいよ忙しくなった。
 もう来ないでと言ってみようか。