バット君は大笑いしました。

「あはは。それって、じっとしてるから、いけないんだよ。その野球っていうのがしたいなら、正直にしたいって言えばいいんだよ。おーい、お父さん。いっしょに野球しようよ。おーい、お父さん。おーい・・・」

グローブ君が悲しそうに網目を細めて言いました。

「もう、やめてよ。おじいさんは僕たちに命があるなんて思ってないんだから。人はみんなそうなんだ」

「ふぅ~ん。ところで命ってなに?野球とか人とか。初めから教えてくれないかな。僕、生まれたてだから」

それを聞いて、ボール君は得意げになって話し始めました。

「教えてあげてもいいけど、さてさて、君に野球の面白さが分かるかなあ。野球っていうのはバットを使って攻めることで・・・、あれ、グローブを使って守る時もあるな。えーっと・・・」

だけど、うまく伝えられません。

「ボール君、よく分からないよ」

バット君は体の年輪にしわを寄せてツッコミを入れました。

「キャッチボールは心のやりとりだよ」

意外にも説得力があったのはグローブ君でした。

「グローブ君、話せばすごいんだね」

その夜、バット君はボール君とグローブ君から、たくさんのことを教わりました。